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福岡100ラボmeetup! 第5回『「暮らしの中で自然と楽しみながら健康になる社会」へアップデート!』イベントレポート
掲載日: 2024/09/12

人生100年時代に向けた未来のまちづくりプロジェクト「福岡100」に関心のある企業や行政、関連団体のために設けられた交流の場「福岡100ラボmeet up!」。第5回では、先進的な健康づくりの取り組みを行っている面々が集まり、事例の紹介や今後の展望について意見交換を行いました。

〈登壇者一覧〉
・西日本鉄道株式会社 天神開発本部天神みらい戦略部課⾧ 荒牧 正道 氏
・株式会社welzo New Biz Development Section 課⾧代理 生嶋 拓也 氏
・歩行速度向上アプリ開発チームSaSaka(さっさか) Kee Seojung 氏、田中 一成 氏、Jiaxu Zhao 氏、Tom Chen 氏
・福岡市保健医療局 総務企画部保健医療政策課⾧ 仲野 雅志 氏
・モデレーター 福岡100ラボ事務局(福岡地域戦略推進協議会)片田江 由佳

(目次)
市民の運動不足解消を目指して
西鉄天神駅の階段が巨大ピアノに変身
親子で運動できるデジタル版エッグハント
高齢者の歩行速度をアプリで楽しくアップ
さまざまな目的を複合的に実現する
お金をかけず、身近な場所で健康に










市民の運動不足解消を目指して









福岡市保健医療局 仲野(以下 仲野):今回のイベントの前提として、まず私が携わっているプロジェクトについてお話ししたいと思います。

3年ほど前から市の事業として「Fitness Cityプロジェクト」を進めておりまして、これは「福岡100」の取り組みの一環でもあります。日々の暮らしの中で「自然と楽しく体を動かしたくなる仕組みや仕掛けがあるまちづくり」をコンセプトにしていますが、要は「無意識に体を動かせるような、まちの機能があったらいいよね」ということです。

このコンセプトにした目的は二つありまして、一つは若い世代の運動不足解消。福岡市は全国的にも比較的若い世代の人口が多いまちで、仕事や育児で忙しい30〜50代の運動不足が懸念されています。そして二つ目が団塊世代・団塊ジュニア世代へのアプローチ。みなさん「健康寿命」という言葉をご存知ですよね。健康寿命の延伸は、福岡市だけでなく国全体で取り組まれている重要課題です。これまで行政は「健康づくりのために運動しましょう」とか、「体にいいものを食べないといけませんよ」というように、広報・周知する形でのアプローチを行ってきましたが、それって子どもに「宿題しないと困るでしょ」と言っているのと同じ。私にも子どもがいるのでよくわかるんですけれども、全く響かないんですよね(笑)。









そういったことが続いた結果、団塊世代の方を含む市内にいらっしゃる35万人ほどの高齢者の方々が、今まさに運動不足で不健康な生活を送り始めているという現状があります。さらに次に危ないのが私のような団塊ジュニア世代で、ここに向けて何かしら運動の動機付けをしていかないといけないというわけです。





そこで市民の健康課題について考えてみました。2019年に国立がん研究センターが出した調査結果によると、BMI(肥満指数)の適正数値とされる23以上27未満の方の死亡率を1とした場合に、19未満の方は男女ともに死亡率が約2倍に高まります。驚くことに、そこに該当する方が男性で25%、女性で20%もいるんですね。一方で、肥満とされる30以上の方も同じく2倍近く死亡率が上がってくる。つまり極端に痩せているのも太っているのもよくないということです。









運動習慣も重要で、週に150分以上の有酸素運動をしている方としていない方を比べると、していない方の方が1.4倍ほど死亡率が上がります。そこで、おおむね週に1回以上何かしらの運動をしている方がどれくらいいるのかアンケート調査を実施したところ、特に30〜50代が運動不足だということがわかりました。特に女性は全世代で男性に比べて運動不足なのですが、30代から顕著に割合が増えるんですね。育児や仕事で運動の時間が取れないことが一つの要因なのではないかということが垣間見える結果です。









この運動不足を解消するために、我々はさまざまな仕掛けをまちの中に作りました。一つが「上りたくなる階段」です。地下鉄博多駅の筑紫口階段に、階段を上った数を市内の名所の高さに見立てて利用を促すデザインを導入しました。









二つ目が「立ち寄りたくなる公園」です。天神や博多などのオフィスで働く人が外に出るきっかけを作るため、明治公園で健康イベントの実施やキッチンカーの出店を行いました。









三つ目が「歩きたくなる歩道」です。博多駅と祇園駅をつなぐ大博通りの西側歩道に足跡をつけたり、休憩場所を設けたりと、一駅分を歩いてみたくなるような仕掛けを施しました。









ちなみにこの足跡に関しては、スタート時は子どもさんだけが食いついていて、大人は「ふ〜ん」くらい(笑)。今はもう少し反応があるのかもしれませんが、最初はそんな辛いスタートでした。





こうしたハード整備をできる限りやってはいますが、なかなか限界があるなと。「Fitness Cityプロジェクト」という名称でやっていますけれども、“Fitness”や“City”という言葉を聞いて、みなさんが何を想像し、創造されるか。登壇者や今日お越しの方々からアイデアを伺って、そのうちの何かを採用させていただくようなことができれば嬉しいと思っています。










西鉄天神駅の階段が巨大ピアノに変身









西日本鉄道株式会社 荒牧(以下 荒牧):次に弊社の取り組みをご紹介します。西鉄天神駅の階段を使い、福岡市さんにもご協力いただいて、2022年夏に「巨大階段ピアノ」というプロジェクトを実施しました。きっかけとなったのはコロナで、激減した鉄道・バスの利用者と天神の集客アップを図るため、複数部署の社員が集まって戦略を考えました。ヒントを探す中で、スウェーデンのあるまちで階段にピアノの装飾を施したら上り下りする人が増えたという事例がありまして、コロナ禍で運動量も減っていますし、西鉄天神駅で同じことをやってみたら面白いんじゃないかという話になりました。









さらに装飾するだけでなく横にセンサーを付けて音がなるようにしたところ、若い方からご高齢の方まで大変好評をいただきました。“天神とにかく楽しすぎ”や“日本のリバプール・福岡が本気だした!”などSNSの反響も大きく、当時のTwitterでトレンド入りして全国ニュースにも取り上げられました。人気YouTuberの「よみぃ」さんも実際に体験した様子をSNSにアップしてくださって、再生回数はなんと370万回にも。

翌年は第2弾として「巨大階段チェンバロ」を実施しました。仕様は全く同じで、白鍵と黒鍵を逆にして、ピアノではなくチェンバロの音がなるようにしました。こちらにつきましても大変好評いただき、普段より多くの方々に階段を利用していただくことができました。









今年の夏もまた実施したいと考えていますので、みなさんにアイデアをいただけたらありがたいです。










親子で運動できるデジタル版エッグハント









株式会社welzo 生嶋(以下 生嶋):続いて私から、弊社の「デジタルエッグハント」というプロジェクトについてご紹介します。我々の本業は農業資材や園芸用品の卸売で、グリーンを活用して世の中に新しい価値を提供していこうとさまざまな取り組みを行っています。その中の新規事業である「デジタルエッグハント」は、キリストの復活を祝うイースターの伝統的な卵探しゲーム「エッグハント」のオマージュで、“人と自然をつなげる”をテーマに、デジタル版の新しいエッグハントを提案しています。





具体的には、市内の公園にあるさまざまな植物の中に卵を隠して、謎解きしながらその卵を探すというゲームです。見つけた卵に記載されたQRコードを読み込むとフォトフレームが立ち上がり、親子で記念撮影ができるようになっています。









開催場所は、東区にあるアイランドシティ中央公園と、西区にある西部運動公園の2箇所。これまでに5回実施して、計1023人の方にお越しいただきました。引き続き実施していく予定です。





参加された親御さんからは、「子どもが喜んでいる姿を見られて嬉しかった」「いい運動になった」「公園内のイベントだから安全」「近場で思い出づくりができてよかった」といったお声をいただきました。





今後の展望としては、公園に限らず、さまざまなリアルな場所で植物とつながる楽しみを見出していただいたり、オンライン上で植物との関わりが持てる取り組みなども考えながら、オフラインとオンラインを掛け合わせた遊びにできたらと思っています。









植物は身の回りにたくさんあるにも関わらず、意外と価値を見出せていないものです。生活者である私たちもそうですし、空間を作る側もあまり付加価値を考えずに植物を設置しているのではないかと思います。そうした部分を少し工夫するだけで、日々の暮らしをより鮮やかにすることができると信じて、今後も取り組みを進めていきたいと考えています。










高齢者の歩行速度をアプリで楽しくアップ









歩行速度向上アプリ開発チームKee Seojung(以下 Kee):次に私たちチームが開発した高齢者向けのiOSアプリケーション「SaSaka(さっさか)」についてお話しします。私たちは全員福岡インターナショナルスクールに通う高校生で、メンバーの国籍もバラバラです。このプロジェクトは「福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム」で採択されたもので、福岡市福祉局さまから提示された「高齢者の歩行速度の低下」「健康の悪化」「要介護の費用負担の増加」の三つの課題解決を目的としています。





●福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアムについて
https://mitou-fukuoka.org/





内容としては散歩アプリで、アプリ名は“さっさか歩き”から取りました。既存のランニングアプリなどと差別化するために「地元スポットの推奨」「インターバル速歩」「健康データの分析」の三つの要素を追加したのが特徴です。単に歩行速度を上げるのではなく、速く、楽しく、気分よく散歩を楽しんでいただけるように設計しました。現在リリースを目標に動いていて、コンソーシアムでの開発時は主に高齢者をターゲットにしていましたが、もっと幅広い年齢層にまで広げていきたいと思っています。









歩行速度向上アプリ開発チーム 田中:特徴的な機能の一つが「タイムコース」で、ユーザーが選択した時間をもとに、地元スポットを通る散歩ルートを作成・案内します。二つ目が「インターバル速歩」で、3分間のさっさか歩きと3分間のゆっくり歩きを交互に繰り返すウォーキング法を促します。これによって無理せず歩く速度を向上させることができ、タイマーで視覚的に進捗を確認することもできます。三つ目が「健康分析」で、歩数をもとに予防できる病気を推定・表示します。この機能があることで、アプリ使用のインセンティブの向上や健康に対する意識向上も期待できます。





歩行速度向上アプリ開発チーム Jiaxu Zhao:私からは開発環境についてお話しします。iOSのアプリということで、機能面の作成やUIデザインはappleが作ったSwiftというプログラミング言語を、プラットフォームとしてXcodeを使いました。またユーザー情報やお気に入りのスポット・ルート保存、トレーニングの記録などを実現するためにRealmというデータベースを使っています。









次にメインとなるルート自動生成の仕組みについてご説明します。これはgoogleマップのクラウドサービスを使っており、CoreLocationから現在地を取得して、歩行時間の設定を行い、Places APIで近くの場所を検索して、Directions APIで所要時間を推定し、ルートを作成してマップ上に描画します。









歩行速度向上アプリ開発チーム Tom Chen(以下 Tom):実際どんな風に操作していくかというと、まずアプリを開いて、ログイン画面でGoogleかLINEを選択します。そしてどんなジャンルのスポットがいいかを選択して、時間を選択するとルートが作成・表示されます。スタートを押すとゆっくり歩きとさっさか歩きを交互に行うための3分のタイマーが作動して、歩数が計測されます。途中、スポットの保存や健康データのチェックも可能です。










さまざまな目的を複合的に実現する






モデレーター 片田江(以下 片田江):皆様のプレゼンを聞いて、仲野課長はいかがでしたか?





仲野:大変興味深く拝聴させていただきました。みなさんありがとうございます。西鉄さんの階段ピアノは市から結構な無茶振りもさせていただいたのではないかと推測していますが(笑)、次の展開はどのように考えていらっしゃいますか?





荒牧:いえいえ(笑)。具体的にはまだ練っている最中ですが、ただピアノがあるということではなく、周辺にも関連づけた何かがあって、まちを楽しく歩いて回れるという点を意識して企画していきたいと考えています。





仲野:welzoさんの取り組みも面白いなと思って聞かせていただいたのですが、自然に絞ったテーマにすると都心で継続していくのはなかなか難しい部分も出てくるのかなと。今後どんな風に考えていらっしゃいますか?









生嶋:場所として制約はないかなと思っていまして、人に来て欲しい場所でどんどん展開していきたいと考えています。例えばシャッター通り商店街とかですね。商店街にすでに面白いコンテンツがあればそれを題材にするのもいいですし、なければ植物を置いていただいて、「デジタルエッグハント」のスキームで面白い場所として認識させて集客を図るなど。





仲野:「SaSaka」チームの取り組み、インターバル速歩というアイデアはどうやって生まれたんですか?





Kee私自身、既存のランニングアプリを使っていて、インターバル機能も付いているんですけど、そういえばウォーキングアプリでは見たことがないなと思ったんです。この機能を追加したら、無理なく休みながら歩くことができるのではないかと考えたのがきっかけです。





片田江:それぞれアプローチは違いますが、皆さんのプロジェクトに共通しているのは、必ずしも健康づくりのためだけではなく、企業理念の実現やユーザーの意識向上など、さまざまな目的も重ね合わせて取り組まれているところかなと思いました。実際に進めていく中で、意外だったことや印象に残っていることはありますか?





生嶋:「デジタルエッグハント」は親子で参加するイベントですが、当初の目論見として、親御さんの運動のためとは全く考えていなかったんですよ。でも実際には走り回るお子さんと一緒に公園内を駆け足で30分ほど動くので、大人としては結構な運動になりますし、終わった後の達成感も相まって「久々にいい運動した!」と思えるんですね。これは健康づくりという文脈でも価値を出せるなと気付かされました。





荒牧:先程も少しお話ししたんですけど、高齢者の方々が楽しんでくださったのは予想外でした。特に女性が複数人で楽しんでいる光景を多く目にしました。踏むと音がなるものですから、やっぱり一人では恥ずかしいんでしょうね(笑)。また、普段と違う装飾をしておりますので、踏み外さないように黄色のテープを目印として貼るなどの安全対策は念入りに行いました。あと子どもさんもかなり喜んでくださって、そのついでに親御さんが上るというような効果も見られました。





片田江:第1回の2022年と2回目の2023年ではコロナなどの状況も変わったと思いますが、ピアノ階段の利用者にも変化はありましたか?





荒牧:そうですね。1年目は話題性もあって、それをめがけて来てくださる方が多かったんですけど、2年目は“今年もやってくれてありがとう”といった声がSNS上で多く見られました。この企画が風物詩化できるように、持続可能なやり方を考えていきたいと思っています。





片田江:「SaSaka」はリリースに向けてターゲット層を広げていくとおっしゃっていましたが、具体的にはどのような変更をされるのでしょうか?





Kee:当初はターゲットが高齢者だったので、目の負担を軽減するために色のコントラストを抑えたり、ボタンの数をなるべく減らして、触っていればある程度使い方がわかるくらいのシンプルなデザインにしていたんですけど、リリースに向けてデザイン面から見直していきたいですね。あとはコミュニティを作るのも面白いなと思っています。









片田江:地元歩きを推奨するのも面白い点だと思いました。発想はどこから?





Kee私は以前東京に住んでいて、2年前に福岡に来たんですけど、都心と自然との距離がすごく近くて驚いたんですね。このアプリを活用することで、都心を歩きながら自然も一緒に味わえるといった福岡ならではの散歩を楽しんでいただけたらと思っています。





片田江:企業活動の一環で健康づくりに取り組む場合、当然収益についても考えなければいけないと思いますが、西鉄さんは企業としてどのように捉えていらっしゃいますか?





荒牧:意識をしていることは「天神っていつも面白いことをやっているよね」というイメージを定着させること。わざわざ天神に行きたいと思うコンテンツがあれば、鉄道やバスに乗っていただけるきっかけにもなります。また、そうでなくても、たまたま天神に行った方がそのコンテンツをSNSにアップしてくだされば、広告を打つ以上の効果も期待できます。正直、なかなか広告費は引っ張ってこられませんから(笑)。何かキーになるものをどんどん仕掛けていくことが重要ですよね。









片田江:welzoさんはいかがでしょうか?





生嶋:「デジタルエッグハント」自体の収益化はまだ十分とは言えませんが、少しずつ兆しは見えてきています。参加者からは参加料をいただいておりますし、今後は集客を上げたいメディアや施設に協賛していただくのも手かなと思っています。また、これは収益化とは直接関係ないですが、福岡市では「一人一花運動」という取り組みを行っていて、まちに花がたくさんありますので、それを活用して市全体を盛り上げるお手伝いができたらいいなと考えています。










お金をかけず、身近な場所で健康に






仲野:冒頭に健康寿命のお話をしましたが、健康寿命をのばすというよりは、平均寿命と健康寿命の差を縮めたいというのがとっても大切なことなんですね。最初は人生70年時代と言われていて、10年ほど前から90年時代になって、その1年後にはいきなり100年時代に変わった。100歳オーバーの方も30年前は市内に一桁だったのが、今は何百人といらっしゃいます。そんな中で、男性は10年、女性は12年くらい不健康だと思いながら過ごして人生を終えているという現状がある。健康づくりを真正面から訴えても人は動きませんので、先程のお話にもあったように、図らずも親御さんの運動につながったというような、副次的に健康づくりに寄与する仕組みが必要だと感じました。









そこでみなさんに質問したいのが、高校やオフィスなど一日の大半を過ごす場所で、自然と健康づくりができる環境を整えるにはどうしたらいいと思いますか?持続可能性も考えて、できればお金をかけないやり方で。100歳まで80年以上もある高校生にこんな話をするのは申し訳ないですが(笑)。

Tom:身近なものだったら、電車の吊り革を使って懸垂をするとか

一同:(笑)。

Tom:あと開発にお金はかかりますが、例えば西鉄さん向けだったら、電車を追いかけるアプリとか。電車の現在地をマップで見ることができて、走ったり自転車に乗ったりして競争する。

荒牧:電車よりバスの方が多いケースかもしれませんが、乗ろうか迷ったけど、やめて歩き出すというケースってあるんじゃないかなと思います。(笑)
ご提案の追いかけるアプリを使って、自分の方が早く目的地に着くなど、自分の判断は間違っていなかったんだと思えたら、歩いても損した気分にならないのかなと感じました。でもみなさん、バスにはぜひ乗ってくださいね。

一同:(笑)。









Tom海外ではビーチにある屋外型のジムで筋トレするのが流行っていて、YouTubeでもバズっているんですけど、百道のビーチにそういう設備を作ったら面白いんじゃないでしょうか。あとARグラスの「ピアノタイル2」っていうゲームアプリがあるんですけど、それを手ではなく足で操作する仕様にして、運動につなげるのもいいと思います。





片田江:企業のオフィスではいかがですか?





生嶋:弊社はビルの2階と3階にオフィスがありまして、1階の出入り口にある花壇とプランターのお世話を有志の社員がやっているんですね。業務時間中のちょっとした気晴らしに水やりをしに行く方もいて、まずそこで階段の上り下りが発生します。また普段あまり会うことのない2階と3階の社員が鉢合わせると、新たなコミュニケーションが生まれます。仕事から離れた場で話すことで「実はこんな考えを持っている人だったんだ」ということがわかったりするんですよね。これは社員の心と体、職場環境に非常にいい効果があるのではないかと思っています。まずは社内で実験的に続けていこうと考えています。





荒牧:我々のオフィスの休憩室には血圧計が置かれていまして、朝行くと使っていらっしゃる方をよく見かけます。たかが血圧計を置くだけのことなんですけど、健康への意識を高めることに少しは寄与しているのかなと思います。あと私は天神で仕事をすることが多いので、基本博多から天神までは歩いているんですが、例えば夏は日陰になるルートを探しながら歩くなど、ちょっとした楽しみを見出しながら歩くようにしています。





仲野:過ごしている環境によって出てくるアイデアもさまざまですね。絶対ダメでしょうけど、止まっている電車の中で懸垂大会ができたらいいですね。





一同:(笑)。





仲野:市役所では、会議時間を短縮したいと思って、ミーティングスペースに椅子を置かずにスタンディング式のテーブルを設置したら、会議時間が半分以下に短縮されました。しかめっ面をして「う〜ん」とか言うのが減ったんですよね(笑)。また副産物としては、腰痛持ちの職員にとっても非常にいいミーティングスペースになっているようです。みなさんのお話も聞いて、意識しなくてもそうせざるを得ない状況に置くことが健康づくりにつながるのかなと改めて思っています。





片田江:では最後に、今後取り組みを進めていく上で、課題も含めた展望を教えてください。





Keeさっきも少しお話ししたんですけど、コミュニティ面の開発も進めていきたいと思っています。地元のスポットが入ったコースなので、歩いている時に「このスポットいいな」「今まで知らなかったけどもっと他の人にも知ってもらいたい」と思ったらすぐに共有できるような、InstagramやXの延長的なツールにできたら。あと、まだ実際に高齢者の方には使ってもらっていないので、リリースする前にフィードバックをいただきたいと思っています。





荒牧:周囲との連携が相乗効果を生むと思うので、企業や行政、団体とウィンウィンの関係性を築きながら、プロジェクトを発展させていきたいですね。またパブリック空間を使うことが多いので、周辺の事業者に配慮しながら、秩序を重視した姿勢を保つことが持続可能性につながると思っています。





生嶋:同じく場所というところで言うと、公園以外にも、“ザ・公共”ではなくても、地域に開かれた公共的な場所は数多くあります。そこに何かしらのコンテンツを導入すれば、地域の方々にとってより価値のある場所にできるのではないかと思っています。「うちが持っている施設を使ってほしい」「近所にこんな面白い場所があるよ」など、色々とアイデアをいただけると嬉しいです。





仲野:市内は便利すぎて、お金をかけないとなかなか体を動かせないので、何かのついでに健康になれるサービスが生まれるとありがたいですね。大がかりに考える必要はなくて、身近なことでいいと思います。最近の個人的なトピックスで嬉しかったのが、生命保険料を実年齢の料金より下げたくて、また、ウェストが基準値を超えて特定保健指導の対象になったのをきっかけに、週2回程度のランニングを習慣化すると保険料が安くなったり、ウェストが減ったんですよ。つまり、どこにその人にとっての健康づくりのトリガーがあるのかはわからない。当然、年齢や性別でも変わってきます。高校生だけで考えても、企業だけでも考えても、アイデアが偏るし実現性も低いので、みんなで連携して次の福岡市の姿を考えると広がっていくのかなと思いました。





片田江:“Fitness City=健康にお金をかけなくてすむまち”ということなのかなと、今回のお話を聞いて感じました。本日の議論がみなさんの新しいアクションにつながれば幸いです。本日はありがとうございました。









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登壇者プロフィール









荒牧 正道 / 西日本鉄道株式会社 天神開発本部天神みらい戦略部課⾧
2002年入社。We Love天神協議会事務局⾧を兼任し、将来の天神を見据え、誰もが快適に過ごせる活気あるまちを目指して日々活動中。









生嶋 拓也 / 株式会社welzo New BIZ Development Section課⾧代理
大学院卒業後、電機メーカー新規事業担当を経て2021年に株式会社welzoへ入社。事業化プロジェクトのリーダーを経験したのち、現在は新規事業開発とオープンイノベーション推進を総括。新規事業開発チーム一丸となり、地域や社会課題の解決に取組む。









Kee Seojung(ギ ソギョン) / 歩行速度向上アプリ開発チームSaSaka(さっさか)代表
福岡インターナショナルスクールに在籍。日常からビジネスやプログラミングに興味を持っており、メンバーとともに新しい創作物を作り上げるという経験を求め、福岡未踏コンソーシアムにリーダーとして参加。これからも学んだスキルやチームワークを通して自己成⾧を遂げることを目指していく。









仲野 雅志 / 福岡市保健医療局 総務企画部保健医療政策課⾧
1997年入庁。2015年より、主に福祉・保健医療分野の企画や総合調整を担当。運動の習慣化に向けた動機づけにアレコレと挑戦中。





モデレータープロフィール









片田江 由佳 / 福岡地域戦略推進協議会 ディレクター





株式会社産学連携機構九州(アイランドシティ・アーバンデザインセンター)、公益財団法人福岡アジア都市研究所を経て、2020年に独立。都市開発・地方創生・ヘルスケアなどの分野で、市民を中心とした多様な主体の共創を支援。





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「福岡100ラボmeet up!」では今後もさまざまな意見交換を行い、人生100年時代に向けた暮らしのアップデートを目指していきます。次回も近日開催予定!どうぞご期待ください。





■お問い合わせ先
https://f-100lab.jp/contact/


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